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信長の城──
信長と家臣、そして配下の武将たちは城に戻り、作戦会議を開いていた。
「儂は浅井長政を討とうと思うが、皆はどう思う?」
「殿への許し難き狼藉…ましてや長政からすれば殿は義兄に当たる。……これは討ち取るしかありませぬな!!!!」
「そうだそうだ!!!」
その時部屋にひとりの女性が入ってくる。
「おっお市様!!!!」
「お市ではないか…。」
お市は信長の前に跪く。
「兄上!!!我が夫…長政の狼藉を詫びに参りました。」
そう言うとお市は胸元から短刀を取り出し、鞘か刀を抜いた。
「私が死んで詫びます故っ!!!」
お市は目をつむり刀を自分の腹に突き立てた。
がっ!!
「!!」
信長がお市の腕を掴む。
「お前が腹を切ってどうする…。まして、お前の腹には長政との子がおるであろう。長政に恨みはあっても、お前やその子に恨みはない。…早まった真似をするな。」
『かっ…適わぬ…。』
お市は泣き崩れる。
「良いか…お市。これは男と男の果たし合い。いくらお前が腹を切って詫びたとしても…おさまることはない。女にだって引き下がれぬことがあるやもしれぬ。…しかしな…自分や自分の子の命を大切にできぬ者は…女である前に人ではない。……直に小谷城は戦渦に包まれる。お前はこの城にいなさい。」
「うっ……うっ。」
「喜助…連れて行け。」
「はっ。」
喜助がお市を抱きかかえ部屋を出て行く。
「お市様は立派に育たれましたな。」
「ある意味…一番強いのは女かもしれぬな。どんな強い武将でも…それを産むのは女だ。」
信長は遠くを見つめながら言った。
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