姉川の戦い

2/53
1094人が本棚に入れています
本棚に追加
/470ページ
信長の城── 信長と家臣、そして配下の武将たちは城に戻り、作戦会議を開いていた。 「儂は浅井長政を討とうと思うが、皆はどう思う?」 「殿への許し難き狼藉…ましてや長政からすれば殿は義兄に当たる。……これは討ち取るしかありませぬな!!!!」 「そうだそうだ!!!」 その時部屋にひとりの女性が入ってくる。 「おっお市様!!!!」 「お市ではないか…。」 お市は信長の前に跪く。 「兄上!!!我が夫…長政の狼藉を詫びに参りました。」 そう言うとお市は胸元から短刀を取り出し、鞘か刀を抜いた。 「私が死んで詫びます故っ!!!」 お市は目をつむり刀を自分の腹に突き立てた。 がっ!! 「!!」 信長がお市の腕を掴む。 「お前が腹を切ってどうする…。まして、お前の腹には長政との子がおるであろう。長政に恨みはあっても、お前やその子に恨みはない。…早まった真似をするな。」 『かっ…適わぬ…。』 お市は泣き崩れる。 「良いか…お市。これは男と男の果たし合い。いくらお前が腹を切って詫びたとしても…おさまることはない。女にだって引き下がれぬことがあるやもしれぬ。…しかしな…自分や自分の子の命を大切にできぬ者は…女である前に人ではない。……直に小谷城は戦渦に包まれる。お前はこの城にいなさい。」 「うっ……うっ。」 「喜助…連れて行け。」 「はっ。」 喜助がお市を抱きかかえ部屋を出て行く。 「お市様は立派に育たれましたな。」 「ある意味…一番強いのは女かもしれぬな。どんな強い武将でも…それを産むのは女だ。」 信長は遠くを見つめながら言った。
/470ページ

最初のコメントを投稿しよう!