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3日後…北近江──
琵琶湖に注ぐ姉川の近くに浅井長政の軍約13000、朝倉景健を総大将とした援軍約5000が織田軍を待ち構えていた。
一方、織田の軍勢は長政達の対岸に陣を構え、その兵数は約15000であった。
両軍の総大将が姉川に歩み寄る。浅井・朝倉方は長政と景健が馬に跨りやってくる。その対岸には織田方の総大将である信長とそれについて渉が馬に跨りやってくる。
渉はこの3日の間に馬に乗れるようになっていた。
「信長よ…戦場に小童を連れてくるとは……呆れたものよ。」
景健が馬鹿にしたような顔をしている。
「景健……貴様が俺を取り逃がしたのは、お前が馬鹿にする…こやつのおかげだ。」
長政はずっと下を向いている。
「ふん…そんなことはどうだっていい。今日こそ貴様の首をいただく。」
「好きにしろ。……長政よ。」
「!!」
長政が顔を上げる。
「長政……覚悟はできているであろうな。」
「信長殿……。」
長政が何か言いたそうにしている。
「縛られるな…長政よ。」
「………?」
「何に怯える。何に縛られる。情や愛が何を生むか。………それは…しがらみだ。…貴様はそれに縛られ、己を見失った。情や愛を捨てろとは言わぬ。しかし、それに縛られるな!!!…長政よ。」
「はっはっはっは。信長よ!!!貴様は長政に説教をしにきたか!!…長政。お前もつまらぬ義兄を持ったものだ……はっはっは!!!」
「……景健。馬鹿に効く薬はないとは貴様のことよ。」
「ぬっ!!」
「力に溺れ、私利私欲のままに刀を振り回す貴様に…天下はとれぬ!!!」
「信長……その減らず口をきけなくしてやるわ。」
「……あんたらだせぇよ。」
「!!」
「!!」
「蘭丸…!!」
渉が長政と景健に口を開いた。
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