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「お主は鬼羅兵之助っ!!!!」
「自分の名ぐらい言われなくともわかっとるわ。」
使いの兵が馬の向きを変える。
『信長様に知らせなくては……!!』
「…殺れ。」
兵之助の左横にいた兵が弓を構え、放つ。
「信長様ぁ──!!お逃げくだされっ!!!!鬼羅兵之助に御座います!!!!!」
放たれた矢は使いの兵の背中に命中した。
「ぐっ!!」
しかし使いの兵は痛みをこらえ馬を進める。
「こんなところで……!!!」
次は使いの兵の右横から矢が飛んでくる。
「どこから!!…くそっ!!仕方あるまい!!!」
使いの兵は右手を盾にしようと、腕を曲げる。
矢が右腕へと突き刺さる。
「!!!」
右腕でとまるはずの矢がそのまま腕を貫通する。
貫通した矢はそのまま頭に突き刺さり、使いの兵は馬の左側に吹き飛ばされた。
「あの威力…。」
兵之助は二本目の矢が放たれた方へと目をやった。
そこには馬に跨った、ひとりの武士がいた。
「弥次郎兵衛!!!」
「兵之助!!約束通り!!力になりに来たぞ!!!」
「ふん。弥次郎兵衛!!お前もなかなかきざなことをするな。はっはっはっは。」
弥次郎兵衛の人間をも吹き飛ばす程の威力の矢を放つ弓。
この弓の名は無風無辺際。
弥次郎兵衛が職人たちに作らせた10人引きの弓である。全長は2メートルを優に超えている。
10人引きというのは、弓の強さを表すものであり、弓を作る際に何人がかりで反りを作るかということに由来している。
10人引きというのは、職人が10人がかりで弦を張ったということになる。
「弥次郎兵衛その弓はどうした?」
「先日、お前の城に訪ねた次の日に完成した。やっと使いこなせるようになったわ。」
「……何人引きだ。」
「10人引きだ。」
「じゅっ…10人引きだと!!!」
「名は無風無辺際。この弓から放たれる矢は…何にも影響されず、広大で果てしない。」
「ふむ……良い名だ。さて弥次郎兵衛よ!!信長には気付かれたであろう。これより突撃するが……お前も来るか?」
「当たり前よ!!」
「行くぞっ!!!!」
「うぉおぉぉお!!!!」
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