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五感を取り戻すと同時に、閉じた目が光を感じた。
「?」
オレ──神崎 鋼介は、心中で首を傾げながら、そっと両目を開く。
途端に、妙な光景が目に飛び込んできた。
(……?)
所々が砂漠化した、草原である。
ポツポツと木が生えている以外は、見渡す限り、背の低い草しかない。さながらモンゴル平原のような景色だ。
が、そんな風景に似合わない物体が、あちこちにあった。
(これ……根っこか?)
足元の"それ"を見ながら考える。
太さがまちまちな鉄の糸が、まるで樹木の根のように、草の上に張り巡らされていた。
根は遥か遠くから伸びており、何から生えたものなのか分からない。
「……」
ここが、オレの精神世界。
だとすれば、この根のようなものは、フェルムの侵食を表しているのかもしれない。
鉄の根は大量に張られている。理事長たちが言ってた通り、侵食はかなり進んでいるようだ。
「……はぁ」
というか、何だこの風景?
草原なのは良いとして、所々が砂漠化してんのはどういう意味だ? 自分の心が分からん。
ため息をつくオレは、
「よう」
まったく突然、背後から声をかけられた。
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