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『今日からオレが、お前の家族で友達で……相棒だ』
父を早くに失い、若くして当主の座に着いた男との、それが初めて交わした会話だった。
準成功体と認定された私を私室に呼び、酒の入った杯を掲げた彼は、輝かんばかりの笑顔で言ったのだ。
その時、私は硬直してしまった。
思わぬ対応に面食らってしまったせいもあるが、それ以上に、私は衝撃を受けていた。
この世界に、あんなにも美しい笑顔の持ち主が居たことに。
あんなにも優しく気高い光を、瞳に宿せる者が居たことに。
目の前で微笑む少年もまた、あの方と同じ目をしていた。
何と優しく、温かく、気高く、清々しく……誇り高い笑顔なのだろう。
この太陽のような笑みに、また触れることができた。
私の凍てついた心は、そんな充足感に満たされていた。
しかし。
そんな彼の手を……私が取るなど許されない。
私の血塗られた手は、触れたものを全て、血生臭い赤へ染めて汚してしまう。
故に何にも触れてはいけないのだ。それが神聖なものであるのなら、なおさら。
何より、私は────
オレへ伸ばされていた手が、翻る。
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