8.破壊の果てに

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わずかばかり残った鱗が砕ける音と、少しだけ苦しそうな呻き。 シグマの右手の剛爪が、彼自身の左胸を深々と刺した時、それらは奏でられた。 「なッ……!」 絶句するオレの足は、その場に根づいてしまったかのように動かない。 「私、が……」 かすれた声を耳にしても、脳と体は痺れるばかりだった。 「共に、歩んで良いのは……勇美様……」 強大なる戦士の声は、吸い込まれるように青い空へ昇り、 「ただ……ひと、り…………」 そっと、途絶えた。 重い沈黙の中、理事長を先頭にした一団が、同様に口を閉ざして近寄ってくる。 彼ら彼女ら──否、その中の時音さんへ、懇願するような眼差しを向けるオレに、 「……すまぬ」 彼女は悲しげに首を振った。 「"止まってしまった時計"までは……わしとて戻せぬのじゃ」 全ての感覚が、停止した。 代わりとばかりに猛スピードで動き出した脳は、あっという間に言葉の海に溺れ、混乱状態に陥る。 何も見えない。息ができない。今シグマが貫いたのは、本当はオレの心臓なんじゃないのか? ブレザーの胸元を手繰り寄せるように掴み、頼りない足取りでその場から後ずさる。 誰かに名前を呼ばれた気がしたが聞こえない。横たわるシグマを凝視しつつ、後ろへ後ろへ下がる。 やがて、オレは気づいた。気づいてしまった。 剥がれた鱗の向こうにあるシグマの顔が、微笑んでいるということに──── オレは、空へ吠えた。 どんな言葉を発したのかは知らないが、とにかく吠えた。 そうしなければ、壊れてしまいそうだった。 ────
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