8.破壊の果てに

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──── まったく突然、その男は目を覚ました。 「……」 どこともしれない白い天井と、自身を取り巻く機器を、ぼんやりと見つめる。 壮絶な咆哮に叩き起こされたような、不快にして奇妙な感覚を抱く彼は、感じていた。 自分たちのリーダーを務めていた男が、その人生に幕を下ろしたことを。 根拠も何もないというのに、何故か分かるのだ。 「……」 すぐにでも彼の元へ行きたかったが、手も足も動いてくれない。 体がベッドに固定されている以上に、全身に大きなダメージが残っていることが原因だった。 「……」 一筋。 臙脂色の瞳の端から、細い水の道が生まれる。 『行く宛もないなら、私と共に生きてはみないか?』 そう言って、手を差しのべてくれた男。 無二の友人であり、かけがえのない仲間であり……広い世界へ連れ出してくれた恩人。 彼の顔を思い浮かべ、 「……さらば」 声とも呼べない小声で呟いた男は、そのまま目を閉じた。 まるで恩人の後を追って死の世界へ堕ちるように、深い眠りへ沈んでいく。 ────
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