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それから、病院には右京氏と輝一さんも居た。
寮を襲撃してきたシグマの仲間に、かなり手酷い怪我を負わされたらしい。
が、二人とも至って元気だった。心なしか、以前より打ち解けていた気もするし。
まあ、それはともかく。
フェルムとの契約を果たしたことを伝えると、右京氏は指先まで包帯に巻かれた右手を、オレの頭にそっと乗せて言った。
「……お疲れさん」
短い言葉は温かく、右京氏も喜んでくれていることを、如実に表していた。
その歓喜を表に出さなかったのは、単に気恥ずかしかったからなのか。
それとも……。
「……はぁ」
漏れたため息が、茜色の陽光に溶けていく。
戦闘中は気を向ける余裕もなかったが、神力による肉体強化は、身体能力も治癒力も爆発的に向上させるらしい。
右京氏同様、オレも腕や頭に包帯を巻いてはいるが、その下はだいたい完治していた。
しかし、まだ痛い。
胸の奥が、重くて痛い。
「……」
もっと深くため息つけば、楽にはなるかな……?
考えていると、屋上の入り口である鉄扉の開く音が、背後で小さく響いた。
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