ハイネ=ヒースガルドの実験記録

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「……授……ラフィネ教授!」 書斎の本の山に腰掛け、過去の記録を読んでいた私は入り口から聞こえるその声に気づくまで少しの時間を要した。 「…すまない。気がつかなかった」 私は読んでいた記録を本の山の一番上に置き、入り口の助手を招き入れる。 「何度も呼んでるではありませんか。何を読んでいらしたの…」 彼女は私が読んでいた記録を見ると、言葉に詰まった。 「…また、ハイネ様の記録を読んでいらしたのですか?」 私の傍に来た白いローブを羽織っている助手は、私が置いた本を手にとり、呆れたようにそう言う。 「うむ…ハイネ=ヒースガルドの次元の欠片の人体投与の例を最初から見直そうとな…だが、やはり分からない」 私は軽く眉間を揉んで、机の上で青い輝きを発している、次元の欠片を眺める。 次元の欠片はハイネの人体実験の例から目覚ましい発展を遂げていた。 ただの高エネルギー物質でしかなかった次元の欠片は今では日常へと応用され、生活の支えとなっている。 しかし、次元の欠片の人体投与、すなわち『欠片の使徒』の創造だけは、ハイネ=ヒースガルドの研究以来、失敗が相次ぎ、成し遂げられてはいなかった。
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