ハイネ=ヒースガルドの実験記録

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「どういう…意味でしょうか?」 フィオーネは驚きに目を見開いている。 「…君を見つけてから5年…私は、ハイネの遺言通りに欠片の使徒の研究を続けてきた。だが、研究はこの様だ。何も進歩しちゃいない。これ以上の発展を望むのならば、私もハイネと同じことをしなくてはならない」 つまり、人体実験。しかしこの国では、人体実験は“人間が最も犯してはならない禁忌”とされ、法律化されている。 現に、人体実験を行ったハイネ=ヒースガルドも、処罰対象になったが、記録に記されていた通り、既に死亡していた。 「しかし、人体実験は禁忌だ。遺言のためとはいえ、一線を越えるようなことは決して犯してはならない。 だから…君の意見が聞きたい。私は…どちらを取ればいいのだ?」 人生をかけた男の遺言と、発展のための禁忌。 私はどちらを優先すべきか、分からなくなっていた。 我ながら最低だと自覚している。 その判断をフィオーネに託しているのだから。
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