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将の話を聞く代わりにデイバックの中から取り出した(一般人から見て)怪しげな物品…(麗華曰く、「風水師必須アイテムの『羅盤』ネ。所長、知らないアルか?」)を覗き込んで何やらごそごそとやっていたのだ。
「そりゃ当たり前だろうが。ここは今では『徳島公園』等と呼ばれて、一般人が出入りしているが、その昔は阿波徳島二十四万石の藩主、蜂須賀公の居城だった場所だぜ。当然、それなりの呪的な結界の中心だったハズだし、ここ『徳島』の龍脈の中心に置かれていても不思議じゃないさ。」
如何にも面倒臭げに将が答えた。ご丁寧に欠伸まで添えて。
…もっとも、言っている本人が意味を理解して話しているという保証はドコにもないが……
「!……、所長、ついてくるネ!この感覚は龍脈とは、多分、ちょっと違うヨ!」
そう言うなり、麗華はある方向に向けて走り始めた。
そう…、もし、この感じが麗華の勘違いでなかったならば……
「早くするネ!グズグズする男はモテないアルよっ!」
《四月中旬・麻生探偵事務所》
「おい、法子。所長は何処に行ったんだ?」
麻生探偵事務所所員、百地 等(モモチ・ヒトシ)は同僚で後輩の香取法子(カトリ・ノリコ)にそう尋ねた。…まぁ、聞かなくとも大体の所は判っているのだが。
「何でも駅前に急用があるそうよ。」
呆れたような顔で法子は答えた。…多分、
「駅前のパチンコ屋は今日が新台入れ替えの日なので急いで行かねばならない。」が正しい日本語訳だろう……
まぁ長くはない付き合いでも、その辺りの事情は判るようにはなっていたのだが……
「やれやれ。差し迫った仕事がないとは言っても、こんな感じで大丈夫なのか…?」
そう言いながら、等は自分の席に戻った。当然、
「大丈夫なのか…?」には色々な意味合いが含まれているのだが……
多分、所長の麻生 良(アソウ・リョウ)は今日中には帰って来ないだろう。
出たとしても出なかったとしても、恐らくパチンコ屋で合流した、この事務所の大家である中川大輔(ナカガワ・ダイスケ)と共に『夜の蝶(蛾?)』と『男の浪漫』を求めて、秋田町辺りをうろつくのが日課となっていたのだから。
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