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「おっと。ここから先は本人の方から、自己紹介をしてもらうべきか。」
担任が、ここでようやくヒルデに話を振った。
「……ヒルデ・アルカードです。はじめまして。」
事務的に、ただ命令された事をこなすように名前のみを告げ、それっきり黙ってしまうヒルデ。
…………………
一瞬、妙な緊張感が教室を支配した。しかし…
「…え~と、それじゃあ。オイ、イインチョー!」
担任は、そんなヒルデの対応にもまったく気にした様子もなく、話を進める。
『我が道を行く』というべきなのか…。否、もしかすると、既に『投げて』いたのかもしれない。
……なぜなら。
「はいは~い。わかりましたぁ。このあたしにぃ、どぉ~んと任せちゃって下さいですぅ。」
廊下側の前から二番目の席から独特の間延びした口調で返事がした。
誰もが微笑みかえしたくなるような…美人と形容するよりも、あどけなさを残した可愛い少女、
このクラス101HRの学級委員長、天野 瑞希(アマノ・ミヅキ)の声であった。
「…。そうか、じゃあ、後の事は宜しく頼む。」
もうツッコミをいれるのも面倒なのか、担任はそう瑞希に言った。まぁ確かに、あのタイミングで女生徒の委員長に声を掛ける理由と言えば、
「学校内でのヒルデの事を頼む」
以外、無いといえばないのだが……
「あたしに任せて貰えれば、ノー・プロブレムってやつですぅ。正に『ドロ船に乗ったつもりでいろ』ですねぇ。」
という瑞希の返答。
ヒルデの時とはまるで逆の緊張が時を支配した。
暫し、担任は難しい顔をして瑞希を見つめる。
しかし、それも一瞬の事であった。この上…、
「そんなに見つめないでくださ~い。テレちゃいますぅ」
等と、言われると二度と立ち上がれない程のダメージを受けると思ったのかもしれない。
「舞衣、舞衣・ワーグナー(マイ・‐)」
「はい、なんですの?先生。」
今度は窓際の一番後の席の女生徒が返事をした。
一瞬、もう一度人選をやり直すべきかとも思った担任であったが…
「ヒルデの面倒を見ている、天野の面倒はお前が見てやってくれ。確か、同じ部活だったよな?マリア先生が顧問の、何とかいう部活の…」
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