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「おい、麗華!こんな所に何が─」
やがて、飛鷹 将が麗華に追い付いた時には麗華は橋の中央に立っていた。
橋の欄干に手を掛けて、何かを探すかのように、池の中をじっと見つめている。
「…!やっぱり何かいる…」
麗華が呟く。池の中で、ゆらりっと何モノかが動く気配がした……。
「麗華ぁ!」
将が叫んだ。
その刹那、何かが堀から飛び出してきた。それは瞬間的に橋の上に飛び上がり、ソレは麗華の目前で『鎌首』をもたげてみせた。
「…蛟?」
目を見開いて麗華はソレを凝視した。橋の上には10mは有ろうかという赤黒い大蛇が、その赤い不気味な目を爛々と輝かせながら、麗華を見つめていたのであった。
「コイツが、じっちゃんの言っていた目的アルか!」
麗華が叫ぶ。
麗華が故郷の中国の客家から出て、徳島にいる理由。
「何かがお前の行く先で起こる。そのすべてを自分の目で見て、自分の手で感じてこい。」
という、判ったような、判らないような理由で(麗華、曰く)追い出されたのだ。しかし……
次の瞬間、麗華はその場から一切、動けなくなっている自分に気がついた……。
そう、これではまるで『蛇に睨まれた蛙』なのだが……まぁ、当事者たる麗華にとって笑える状況ではなかったが……
大蛇が麗華に向かって、大きく口を開く!
その刹那、赤い大蛇に向かって、小さなきらめきが宙を走った!
大蛇が、この世ならざる咆哮をあげた。その瞬間、麗華の四肢に自由が戻り、大蛇と麗華の間に、将が割り込んだ。
麗華は足元に転がっている二つの、小さな銀のきらめきに気付いた。
「パチンコ玉?」
将が左腕に麗華を抱え、
宙に舞った!…その瞬間、一瞬前まで麗華と将の存在していた空間を大蛇の牙が閃いた。
そして再び、銀のきらめきが宙を走る。
将の右手の親指が閃くと、銀のきらめきが宙を走っていたのだ。
「指弾アルか!?」
見事に受け身を取って立ち上がった麗華がそう叫んだ。
この飛鷹 将という男は、流暢な広東語を操るだけで十分怪しいのに、この上、指弾まで操るとは……
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