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亜衣の依頼内容とは、誘拐された弟(亜衣はそう言って聞かない。しかし、身代金に関する脅迫文や電話の類いは一切為されておらず、警察や亜衣の両親。そして弟の通っていた中学は『家出』という見方をしているらしい)の『葛城 悟』(カツラギ・サトル)の捜索であったのだ。
「当たり前やんけ。大体、麻生探偵事務所が追い掛ける事件言うたら、復活しかかっとった邪神とその信者との戦いやとか、狂った救世主を復活させようとした組織との暗闘やとか、そないなでっかい事件がメインなんや。…それが、そこいらの探偵でも出来るような仕事を簡単に受けた、いう事がこの業界にバレてみぃ、それこそ同業者の物笑いのタネにされるがな。」
大輔が怪しい関西弁で捲し立てる。もっともその喋り口調から、どこまでが真実でどこまでが虚構かは不明だが
「まして、何処ぞの中坊のガキの家出捜索なんぞ阿呆くそうて、やっとれるかいな。大体、屁理屈の奴は、その亜衣言う姉ちゃんが、えろぅしつこかったさかい、コッチに回したんやろうが。」
そこまで言ってから、大輔は手にした調査票を等や法子の方に滑らせた。
そして……
「まぁ、ちゅう訳やけん、この仕事は等と法子の二人でやってもらうべきやな。雛鳥のちょうどいい試金石って奴や、なぁ所長。」
所長の麻生 良の方に話を振る大輔。やや大仰な仕草で首肯いて見せた良は
「そうだな。それにこれぐらいの事件を扱えなかったら麻生探偵事務所の探偵助手なんて勤まる訳はないんだしな。…まぁ、取り敢えずは二人だけでやって貰おうか。」
《四月下旬・城の内高校・昼休み》
麗らかな春の陽光。
校舎と学生食堂によって囲まれた中庭。
その中庭を縁取る緑の芝生の上に座り込み、話をする三人の美少女(?)
否、多分、世間一般の常識及び見た目(だけ)ならば十分、美少女なのだろうが、どうも三人とも何処か『ずれた』感覚の持ち主であったのだ。
「やっぱり、ヒルデちゃんって、今までドイツで暮らしていたんですよねぇ?。」
天野 瑞希が当たり前の質問をした。
「えぇ。」
ヒルデ・アルカードが答えた。尚、ヒルデの受け答えは総て、このパターンだった。そう言えば、彼女の対応を『木に鼻を括る』と表現した男もいたのだが…
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