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当然、午前中物珍しさ+αの理由で彼女の周りに集まった他の生徒達は、早々に退散する事となっていた。
後に残ったのは、担任の甲斐にヒルデの事を任された瑞希と、その瑞希の面倒を見る事を頼まれた舞衣・ワーグナーの二人だけとなっていた。もっともこの二人ならば、そのままうっ棄っておいたとしても、最後までついてきていただろうが。
「で、マリア先生ってどんな子供だったんですの?」
舞衣の質問。しかし…
「判らない」
ヒルデの答え。続けて、
「私はずっと病院で暮らしていたから…」
…白色人種のアルビノは、もしかするとヒルデのように、極端な容姿になるのかもしれない。確かに、瞳の色はアルビノ特有の色彩であったし、肌の色もそうである。
只、髪の色が、少々青みがかっている点が奇異と言えば、奇異なのだが…
「ごめんなさい。私…」
舞衣がしゅんとして謝る。
「かまわないわ。」
しかし、ヒルデは一向に気にした様子はない。そう、その受け答えはそれまでとまったく変わる事のないヒルデの姿であった。
「食事はもう終わったの?」
ちょうど、会話が途切れた瞬間を見計らったようなタイミングで、三人の後方…学生食堂の方から女性の声が掛けられる。
振り返った3組の瞳に、春の麗らかな陽光に映える見事な金の髪を持つ女性が映った。
「あっ、マリア先生!」
代表して舞衣が返事をした。
マリア・アルカードは、彼女に相応しい歩き方で(大股でしっかりした歩調)三人の側に立った。
「瑞希さんと舞衣さんを、さっき3年のレベッカさんが捜していたんだけど、もう会ったかしら?」
甲斐正広曰く、『何とか言う部活』と言うのは、正確には『超常現象研究部(略して、オカルト研)』という名称であり、マリアはその部の顧問、
瑞希、舞衣は共に部員であった。…もっとも、マリア本人がその方面の知識に詳しいかどうかまでは不明だが、もともと、ここ、城の内高校とは、県内でも比較的新しい学校であり、色々なクラブ活動を奨励する傾向にあったのだ。
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