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「まず何から話すべきか…」
そう前置きすると、その男の人、飛鷹将(ヒダカ・ショウ)は静かに語り始めた。
「公には認められていないが、『悪魔』は存在する。そして俺は、その『悪魔』…より正確には『仲魔』を駆使し、奴等と戦うデビルサマナーなのさ。」
常人なら、正気を疑うような内容を茶飲み話のようにさらりと言う。
でも今の僕には、自然に受け入れられた。
「ここ最近、この街のゲートパワー…平たくいえば『悪魔』の世界と『現実界』、こちら側を結ぶ目安みたいなものだが、の変動が激しくてな。」
そう言われれば、いくつかの事柄に思い当たる節があった。
ホームレスの老人が野犬…らしきもの、に襲われ、無残な死体となって発見されていた。
同級生たちが、まことしやかに語る都市伝説の中に『人の顔を持つ鳥』の話がなかっただろうか?
「詳しい事はまだ言えんが何らかの組織によるものかもしれない。」
またしても、とんでもない事を告げた。
「組織?」
「確証はないがね。人為的な思惑で街一つ、生け贄に魔界から大物を召喚しようと企んでる輩がいても不思議じゃない。
…やだねぇ。世も末だ。」
おうむ返しに尋ねた僕の言葉尻に待ってました、とばかりに捲し立てる飛鷹さん。…僕に聞かせたがっている?…のか。
「断っておくが、俺は世間一般で言われる『正義の味方』じゃないから、悪は許さない、なんて台詞を言うつもりはないがね、ただ自分が生まれ育った街や、『古い友人たち』にちょっかい出そうとする奴等の鼻っ柱、へし折りたくなるのさ。」
あの独特な男臭い笑みと、プラス…新しいイタズラを思いついた子供のような笑みを浮かべる飛鷹さんに僕は懐かしいともいえる既視感を覚えた。
僕はこの人を知っている!。
「さて、随分と夜もふけた。話はまたの機会にするとしよう。…家まで送ろうか?」
そう言うと、飛鷹さんは
自転車のハンドルを握る僕の肩を一つ叩いた。
「あの、以前どこかでお会いした事ありませんか?」
素直に感じた疑問が口をついて出てしまう。
傍目にみれば僕も『変な人』に見られるだろうな。
「…かもな。」
否定とも肯定とも取れる玉虫色の返答をすると飛鷹さんは背を向け歩き始めた。
あえかな街灯の光が照らす何の変哲もない路地。
だが僕には現実と重なるようにもう一つの景色が
見えていた。
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