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五月晴れ、そんな言葉が良く当て嵌まるある日のこと。
柔らかな日差しが、これから深緑を増して行くであろう木々へと降り注ぐ。葉の隙間をすり抜けた光は、木漏れ日となって地面を照らす。
そんな木漏れ日の下で、話をする二人の人物。
一人はまだ幼さの残る少年、十四、五歳であろうか。俯き表情はよく見えないが、呆然と立ち尽くしている様にも見える。
隣り合わせる様に居るのは女性。まだ三十代に入ったばかりだろうか。長く伸びた後ろ髪を一つに纏め、肩に掛かるように垂らしている。
穏やかな笑みを浮かべて、じっと少年を見つめている。
二人の目線が重なり合う。ただし、高さは合っていない。少年が見下ろす形になっていた。
決して女性が小さい訳でも、或いは少年が高過ぎる訳でもない。単純に言えば女性が椅子に腰掛けているからで。
だが――、
椅子には四つの車輪。背もたれに付けられたハンドル。ある一定の施設に於いて、当たり前に使用されている物――『車椅子』
よくよく見ると、後方には少しすすれている白い建物が建ち、遠目で赤い十字が掲げられている。
緑で囲まれた敷地内に溶け込む施設。都会の喧騒から離れ、静養と言う名の隔離、そして離別の場所。
敷地の中心にそびえ立つ一際目立つ大きな桜。その下で少年と女性は、同じ時の流れを共有するのであった。
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