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窓の外に奇妙な形の雲が広がっている。
ドーナツ状の雲の中央に、たった今、離陸してきた地方の都市の街並みが見える。
岡田友宏は膝に広げていた雑誌を前座席のポケットに入れた。
頭上のシートベルト着用サインはまだついている。
友宏が生まれて初めて飛行機に乗ったのは、今からもう二十年以上も前、小学四年の春のことだった。
あいにく楽しい家族旅行ではなく、横なは、やはり初めて飛行機に乗る着物姿の祖母がおり、座席に正座してもいいものだろうか、としきりに友宏に聞いてきた。
その前の晩、両親と兄は大阪へ出かけていた。大阪に住む父の従姉の結婚式だった。
友宏だけ家に残ったのは、週末に所属している野球部の試合があり、最後の最後にレギュラーメンバーに選ばれてしまったからである。
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