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「懐かしいね。もうゆう君と出会ってからそんなに経つっけ。びっくりしたな。あの時は。地味だった私を好きだって言ってくれるなんてびっくりした。それが私の大好きだったゆう君だったことを知ったときには心臓が止まりそうになった。」
彼女が悠馬の顔を見つめあげた。その顔があまりに可愛すぎて悠馬は視線を彼女から逸らした。
川面のほうを見て、ドキドキと騒ぐ心拍を感じられないように必死で隠す。
「恥ずかしい事いうなよ。そ、そんなことより本題は?虹の玉ってなんなんだ?」
無理やりにこのなんともいえない空気から抜け出そうとした。
ただ、この行動が運命を変えてしまったのかもしれない。彼女が少し憂いた表情を浮かべ、どこか不安そうな、それでも明るく朗らかな声で悠馬に聞いた。
「あ、そだね。すっかり忘れてたよ。そうだ。ゆう君に伝えなきゃいけないんだ。虹の玉っていうのはね、上手く説明できるものじゃないんだけど、君の中にあるモノ。私と君を繋いでくれるモノ。なんだ。」
“君”、という呼び方からして、どこか変な気がした。普通ならゆう君と彼女は呼ぶはずなのに、それを伝える彼女がどこか彼女じゃないような気がした。
「そんなの、いろいろあるだろ。心とか、気持ちとか。」
悠馬がそう言うと、彼女は首を左右に振った。
「ううん。そういうのじゃないの。そんな非科学的なものじゃなくて、ゆう君の中に私を映してくれるもの。それが虹の玉なんだ。」
彼女はもう一度、悠馬の顔を見上げ、見つめた。
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