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「きったーざわ」
「きったーざわ」
北澤は声援に応えるように勢いのままに涼に迫ると、胸倉をがっと掴んだ。
「あんまり調子のってると痛い目に合うぜ、相馬ぁ」
「弱い犬程よく吠えるとはよく言ったもんだな」
涼がからかうようにそう言った途端、北澤の中で何かが音を立てて切れた。
「何だとこの野郎!!」
北澤は目を見開き、涼めがけて殴り掛かった。
しかし、涼はそれをいとも簡単に防いでしまったのだ。
しかも指一本で。
「な、何だこいつ!?」
北澤がいくら力を入れてもピクリとも動かない。
「雑魚は黙ってりゃいいんだ」
涼は北澤の頭をがっと掴むと、そのまま平然とした顔で上に持ち上げた。
「あ、頭がぁぁぁぁあぁ!?」
涼の手から逃れようと必死に抵抗するものの、一向に放す気配はなく、逆に暴れれば暴れる程、強く締め付けられていく。
「り、涼!!もういいじゃないか!!勝負ついてるだろ!?」
見かねた和人は涼の腕をペチペチと叩いて手を放すように催促した。
涼も和人の必死な顔を見て仕方がないといった感じで手を放した。
北澤は地面に頭を抱えて倒れ込み、悲鳴をあげながら辺りを転がり回った。
「ふん、情けない姿だな」
「もうちょっと手加減しないとダメじゃないか!!」
「そんなこと、知った事じゃねぇな」
涼が気だるそうにそう言って自分の席に戻ろうとした時、後方で頭を抱えながらすごい形相で涼を睨み付けている北澤がいた。
北澤はまるで忍者のように静かに立ち上がる。
「こいつは許さねぇ……俺がこの手で殺してやるぜ」
北澤はおもむろにポケットに手をいれる。
ポケットから取り出したもの、それは……。
ナイフだった。
辺りの生徒の声が次々と悲鳴に変わる。
「死ね、相馬ぁーー!!」
ナイフを大きく振りかぶって涼に切り掛かる。
周りの生徒も思わず目をそらした。
「俺はしつこい奴が嫌いなんだよ!!」
涼は振り向き様に北澤の腹部に思いっきり回し蹴りをきめた。
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