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勿論、手加減など一切無しだ。
「……!!」
涼が蹴った瞬間、衝撃を受けた腹部の一部が黄色く発光した。
優奈はその瞬間を見逃さなかった。
北澤の体はまるで木々を薙ぎ倒すように机をどんどん薙ぎ倒していった。
その体は勢いよく黒板にぶつかり、北澤の体は力無くうなだれた。
「ったく…無駄に力使わせんなよな。」
涼は制服のズボンについた埃をパパッと払うと、皆の視線を痛いほど浴びながら独り、教室を出ていく。
すると何故か優奈も席をたち、涼のあとを追っていった。
「待ちなさいよ!!」
優奈はようやく人知れぬ場所で涼に声をかけることができた。
そこは暗く、じめじめとした体育館裏だった。
涼はぴくっと反応し、ゆっくりと体を優奈の方に向ける。
「何だ。何か用か、転校生」
涼は面倒臭そうに素っ気なく言う。
「単刀直入にきくわよ、あなた……魔法が使えるんでしょ」
優奈は冷静を装って言った。
しかし、その目は何一つ落ち着いてはいなかった。
「魔法??寝言は寝ていえ」
涼は鼻で笑うと優奈を放って独り奥地へと踏み込んでいく。
だが、優奈もおずおずと引き下がってはいられない。
「私見たんだから!!あなたが彼を蹴った時に起こった、魔法をかけたときにだけ起こる特有の黄色反応を!!」
優奈が大声で涼に訴えると、涼は足を止めて顔だけをこちらに向ける。
「テレビの見すぎだな。重度の馬鹿につける薬はねぇ」
涼は吐き捨てるようにそう言うと、再び奥地へと歩んでいった。
「最後に一つ言っておくわよ!!私にはちゃんと虹河優奈っていう名前があるんだから!!」
優奈は顔を赤くして、怒鳴るように言った。
「そんなもん、朝聞いて知ってるってんだ」
振り向きもせず、歩きながら自分の頭を指差して馬鹿にするようなそぶりを見せると、奥に姿を眩ませた。
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