第一話「不思議な転校生」

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今日の一日は早かった。 気付いた頃にはもう放課後だ。 このクラスは他のクラスでは実施していないテストを終礼時に行っている。 それは英単語のテストであったり、古文の単語テストであったりと内容は様々である。 「はい、後ろまでいきましたか?? じゃあ始めてください」 担任がそう言うと、皆一斉にプリントを表返した。 カリカリと用紙に記入する音が教室中に蔓延する。 ーーまたテストか…… 涼は心の中でぶつぶつと言いながら、プリントの上に右手をかざす。 ーーブレイクダウン 涼がそう小さく呟いた時だった。 右手が微かに光り、じわじわと解答用紙に答えが浮かび上がってきたのだ。 答えはもう全て出かかっている。 いつも通りだと涼はほくそ笑んでいた。 が、その時だった。 魔法の効力が突然薄れ始めたのだ。 ーー!? な、何故だ……!? 涼は目を白黒させて何度も何度も右手をかざすが、全く変化はない。 それどころか、先程まであった文字さえも綺麗に消えてなくなってしまった。 ーー訳わかんねぇぞ……俺そんなに魔力使ってねぇのに…… 涼が頭を抱えていると、突然耳元で誰かが囁く。 「テストは実力でやるものだよ」 涼は敏感に反応し、バッと後ろを振り向いた。 が、そこに人の姿はなかった。 しかし、何か別の有り得ない…… 大きなリボンをした変わった生き物が空中を浮遊している。 「私が見えるの??」 涼は目を疑い、目を何度もこすった。 しかし、目の前のそれは現実だった。 そこにいるのは七色に光る四枚の羽をもち、何故か制服姿の手の平サイズのかわいらしい妖精だったのだ。 「な、何だお前は」 何か他にもっと聞くべき事があるような気がする中で、頭の中で整理がつかずに真っ先に思ったことを口にした。 「やっぱり私の姿が見えるんだぁー。ちょっと感激だなぁ!!」 妖精は嬉しそうな表情を浮かべながら、手を頬にあてて体をよじった。
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