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「人の話を聞け」
涼はそう言って妖精を軽く睨んだ。
妖精ははっとした表情で涼を見遣る
どうやら我にかえったようだ。
「あ、えーっとね、私は見ての通り妖精だよ」
妖精はそう言うと、自分の存在を誇示するように胸の辺りをぽんと叩いた。
「そんなこと分かってる。どうしてこんなとこに妖精がいるんだよ」
「カンニングしようとする君を止めるために派遣されてきたんだよ」
妖精は身を翻すと、涼の机の上の解答用紙の上に降り立った。
綺麗な四枚の羽が折りたたまれる。
「派遣?? 誰の命令だ??」
涼は思わず首を傾げ、頬杖をついて妖精を問い詰める。
「それはねぇ……ゆーーわわっ!?」
言いかけた途中、何かに引っ張られるように小さな体は飛んでいってしまった。
妖精のたどり着いた先は優奈のところだった。
「ルナフィス、何余計な事まで話そうとしてるのよ!?」
優奈が真剣に言っているのとは対照的に、ルナフィスはまるで罪の意識がないようでキョトンとしている。
「あれ??私何か言おうとしたっけ??」
ルナフィスはハハハと頭をポリポリ掻きながら小さく笑った。
それを見て優奈は小さくため息をつく。
「あんたねぇ~…密かに行おうとしていることをばらしてどうするのよ。しかも丁寧に主人の名前まで言おうとして」
「私が言わなくても主人はばれちゃったと思うけど??」
「……何でよ」
「だって優奈、私の事引っ張ったじゃない」
「あっ!!」
優奈ははっと思い立って涼のほうを見た。
涼の驚いている目はしっかりと二人をとらえていた。
万事休す。
「あっちゃーー……」
「まぁそういう日もあるって」
ルナフィスはやはり他人事のようにクスクスと笑って言うのだった。
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