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「え~っと、相馬さんだったっけ?? そんな風に隠しても無駄だよ~??」
「ど、どういう意味だよ」
「だって私の姿は魔法使える人にしか見えないんだもん」
辺りが凍りついたように時間が止まった。
ルナフィスの陽気な笑い声が静寂を掻き消すように響いている。
無神経にもほどがある。
優奈でさえ空気を察して少したじろいでいるというのに。
「あ、あれ?」
ルナフィスの表情が段々曇り始める。
どうやら気付いたようだ。
「もうちょっと溜めてから言うものよ、ルナフィス」
優奈は呆れた声でそう言うと、はぁ~っと右手をこめかみにあててため息をついた。
「テストの時といい今回といい、またお前か……もう我慢ならねぇぞ……」
涼の右手が紫色の怪しい光を帯び始める。
「え?? え??」
「ちょっと可愛いからって調子のってんじゃねえぞ!! 『ザライド』!!」
涼がそう言ってルナフィスに右手を向けると、紫色の光線が侵食するようにルナフィスに放たれた。
だが、ルナフィスも一筋縄ではいかない。
「わわっ!! 『リフレクト』!!」
ルナフィスの回りを黄色い薄い球状の膜が包み込む。
涼の魔法はそれによって全て、掻き消されてしまった。
「なっ……!?」
涼は唖然とした。
「ふぅ~危なかったぁ…『ザライド』って一撃必殺の呪文じゃない。ま、上級クラスの呪文じゃなかったのが幸いだったけど」
ルナフィスは膜を解くと袖で額に浮かんだ汗を拭った。
「言い忘れてたけどルナフィスも魔法が使えるのよ」
「さようでございますー」
ルナフィスは敬礼する真似をすると、プッと吹き出してハハハと笑った。
「ち、くだらねぇ……」
涼は椅子に腰を掛けると、腕枕をして寝ようとした。
「えー?もう終わりなんだぁー。意外と呆気ないね」
ルナフィスは涼の顔の前にすっと降り立った。
「うるせぇ。ガキは家で寝てやがれ」
「あっ!! そんなこというんだぁー!! 優奈に言ってお仕置きしてもらうよ??」
「いてっ」
ルナフィスは涼の腕をポンと蹴った。
涼は小さく舌打ちすると、ふと例のことを思いだし、顔を優奈に向ける。
「そう言えば虹河、お前、魔法が使えるって本当なのか??」
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