第一話「不思議な転校生」

16/21

262人が本棚に入れています
本棚に追加
/102ページ
涼は上体を起こして優奈に尋ねる。 「私?? 私は使えるよ。ただ、相馬君やルナフィスみたいにその場ですぐには使えないけどね」 「……??どういう事だよ」 涼は小首を傾げる。 「私の場合、これが必要なの」 優奈はごそごそとポケットから透明のケースに入れられたカードの束を取り出した。 ケースが少し傷ついている。 長年の相棒なのだろう。 「カード?? それって今日タロット占いで使ってたやつか??」 「そうだよ。私は精霊を操る魔法がつかえるんだ。召喚する時は精霊の名前を呼ぶから、それまでは普通のタロット占い用のカードなんだ」 「へぇーーなるほどな」 涼はケースを慎重に開けると、束の一番上のカードを取り上げてまじまじと観察した。 「本当にただのカードだな」 数字さえあればトランプとして使えるのではないだろうか。 「でしょ?? よくできてるよ、ホント」 優奈はカードのできに改めてコクコクと頷いて、感心の意を表した。 「ちなみにこのカードの名前は何て言うんだ??」 涼はカードの絵柄を優奈に見せた。 そこには白く輝く、長い髪をした女性と思われる精霊が祈っている姿が描かれている。 「それはね、クリスっていう……ーーあっ!?」 涼はニヤリとほくそ笑んだ。 カードの絵柄の部分が一瞬光ったかと思うと、絵柄の聖霊がカードの中から姿を現したのだ。 「お呼びですか、優奈さん」 「ごめんクリス!! 今の間違って召喚しちゃったんだ!!」 優奈は両手を合わせて、申し訳なさそうに頭を下げた。 「構いませんよ。頭をお上げになってください。間違いは誰にでもあるものですから」 クリスは優しくそういうと、カードの中に光となって戻っていった。
/102ページ

最初のコメントを投稿しよう!

262人が本棚に入れています
本棚に追加