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「全くもう……」
「はいはい、そんなに落ち込まないの」
ルナフィスはやはり他人事のように優奈の背中をポンポンと叩いてハハハと笑った。
さすがに優奈も黙ってはいまい。
「あんたもその他人事みたいな態度そろそろやめてくれないと、カマル使って消すわよ??」
優奈は引きつった笑みを浮かべ、肩をプルプルと小刻みに震わせながら言った。
ちなみにカマルとは、精霊としてのレベルが高いうえ、一撃必殺の技を数多く持っている普通はとても恐ろしい精霊なのだ。
しかし、精霊同士でも何らかの恋愛感情がわくものなのか、ルナフィスを見つけるとなにかわけのわからない言葉を発しながら彼女にラブコールを送り続けるのだ。
「わわっ!! カマルはやめてよ!! 私と目があっただけで止まらなくなるんだから」
ルナフィスは困惑した表情を浮かべながら、カードケースを開けさせまいと、必死にそれにしがみついた。
「じゃあ以後、他人事のような態度を取らない事ね」
「は、はい……わかりました」
ルナフィスはカードケースからゆっくり離れると、しゅんとなってロッカーの上に座った。
「……相当落ち込んでいるみたいだな」
少し可哀相だと思ったのか、涼はルナフィスにそっと言った。
「今の今までずーっとこのキャラで生きてきでしょ??だから今更改善となるといつかボロが出て……はぁ……」
ルナフィスは肩を落としてため息をついた。
「まぁ虹河もちょっとぐらいそういうキャラがでても許してくれるさ。流石にそこまで鬼じゃないだろう」
「そうかなぁ」
ルナフィスは縋るような目で涼を見つめる。
その潤んだ瞳は日をうけた水面のようにキラキラと輝いている。
「ああ、きっと大丈夫だ。だから落ち込むな」
「うん、ありがとう」
涼は小さく微笑むと指先でルナフィスの小さな頭を撫でた。
涼が笑顔を見せたのはたぶん小学生以来だろう。
なぜかルナフィスには心を開けたのだ。
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