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全ての準備が整い、鞄を持つと、涼は重たい足取りで家を出た。
ーーまた今日もいじめられるんだろうな……。
涼は憂色を浮かべながら俯き加減で学校へと向かっていく。
ため息ばかりが幾度も目の前をちらついていく。
そんな時だった。
ドンッ
「うわっ!?」
何かにぶつかった。
寝ぼけて電柱にぶつかったのだろうか。
しかし感触はコンクリートのような硬さはしていない。
まさか……
涼は恐る恐る顔をあげてみる。
「よぉ相馬」
「さ、櫻井君……」
最悪だ。
涼の前にいたのは腕を組み、仁王立ちしている櫻井だった。
櫻井は不気味な笑みを浮かべ、見下すような目で 涼をみている。
「今日の放課後、いつもの体育館裏にこいよ。遊んでやるからよ」
ただそれだけを言い残して櫻井は大声で笑いながら学校へと歩いていってしまった。
ーー……よりにもよって予告かよ……
さらに重たくなった足を引きずって、涼は学校へと向かった。
放課後になった。
いや、なってしまった。
時間がやってくるのは必然だ。
涼にとってこれほどまでに授業が早く終わってほしくない日はなかった。
鞄に終礼で配られたプリントを整理して入れながら、どうにか痛くないように切り抜ける方法をひたすら考えた。
ーー俺が本当に強くなってたらなぁ……
ため息をつきながら鞄をしょった。
憂鬱だった。
体育館裏は教室を出ればすぐそこで大きな口を開けて待っている奴ら。
重たい足取りの先に櫻井の姿が見えた。
ーー何で自分からいじめられに行ってんだ、俺は……
何人か涼に敵意を持っているやつらも待機している。
そんなこと、はなから分かっていた事なのだが。
その内の一人が涼の存在に気付いて声をあげる。
「あ、きたぜ」
涼は奴らの円の真ん中に陣どらされる
「おい相馬ぁ……俺ら待たせるってどういうことだ…よ!」
櫻井の声が力んだかと思うと、次の瞬間涼の体に苦しみと激痛が腹部から全身に走った。
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