第二話「過去と死神」

7/18

262人が本棚に入れています
本棚に追加
/102ページ
「ぐ…」 涼は腹部をおさえ、声にならない声でうなりながらその場に座り込んだ。 ーーくそっ……何が強くなれるだ……。ちょっと期待してこの場に挑んだっていうのに……!! 涼は片目を開けて鋭い目付きで櫻井を睨んだ。 もはや自分の力に頼るしかない。 「お? なんだよその反抗的な目は。俺はお前のそういうところが嫌いなんだよ!!」 櫻井は憎悪のこもった声でそういうと、涼の髪をがっと掴む。 「痛っ……!!」 涼は痛々しい表情を浮かべながらもなお、櫻井を睨み続ける。 「その目をやめろっていってんだろうが!!」 桜井は叫ぶように言うと、涼の顔を思いっきり殴ろうとした。 ーーくそっ……やっぱり夢だったんだ!! 覚悟をきめ、歯をくいしばった。 ー…………せ ー……の………ざせ 誰かの囁く声が聞こえる。 涼はゆっくり目を開けてみた。 時間が止まっている。 「あ……れ……?」 涼……バーストと叫んで両手の掌を櫻井にかざせ…… この声はあの時の死神そのものだ。 あの声を忘れるはずがない。 ただ、今は躊躇している場合じゃない。 涼はすかさず叫んだ。 「バーストォォォォォォーー!!」 半ば投げやりに絶叫した。 すると、凄まじい衝撃波が櫻井の体を正面から襲ったのだ。 周りの落ち葉はまるで竜巻にあったかのように舞い上がる。 「うわぁぁぁぁぁーー!!」 櫻井の体は塵のように吹き飛んだ。 そしてその時、偶然か、はたまた死神の仕業か。 大型トラックが丁度櫻井の横から迫っていた。 キキキキキーーーーッ!! ドンッ!!! 空気が凍りついた。 景色が一瞬で切り替わっていく。 櫻井の体は鈍い音と共に数十メートル先にまで飛ばされてしまった。 勿論、即死だった……。
/102ページ

最初のコメントを投稿しよう!

262人が本棚に入れています
本棚に追加