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「……その頃からだな、俺が死神って呼ばれるようになったのは」
「ふーん……そっか……。その櫻井君ていう子を殺しちゃって後悔してる?」
「正直なところ後悔は全くしてないな。あの時あいつを殺さなかったら俺はきっと自殺していただろうし」
涼はそう言って教室の窓をガラッと開けて黄昏に染まっていく町並みを眺めた。
暖かい夏前の風が涼の頬を優しくなで、カーテンを揺らしていった。
涼が何となくあの頃を回想していると、何かが肩に乗っかった。
涼はふとそちらに目をやる。
「はぁ……はぁ……た、助けて……」
涼の肩に乗り掛かってきたのは息をきらし、いつ死んでもおかしくないような様子のルナフィスだった。
助けてと懇願するように何度も何度も涼に訴えかける。
「虹河、いい加減助けてやったらどうだ? …死にそうだぞ、こいつ」
涼はルナフィスの制服の襟元辺りを指先でつまむように持ち上げて言った。
あまりに滑稽な姿である。
「うーん……そうね、もう許してもいいかな。カマル、戻って」
「えーーっ!? これからっていうときですよ、優奈さん!?」
カマルは残念そうな表情を浮かべて優奈にすがりついた。
「ダーメ。ルナフィスがあんなにしんどそうにしているじゃないの。そこまでしろなんて言ってないしね。ま、どうしても戻れないっていうなら……」
優奈は何かを言いかけると、カードケースを手にもって軽くカマルを睨んだ。
「戻ります」
「ん、よろしい」
カマルは優奈の意味ありげな瞳から何かを感じとったのだろう。
潔くカードの中に戻っていった。
「や、やっと解放されたぁ……」
ルナフィスは安堵のため息をはくと、羽を閉じてぐったりした。
「俺はどうすればいいんだよ、ルナフィス」
「え……あ、ああごめんなさい……。肩の上に乗せてもらっていいですか?」
乾いた声でいうルナフィスを突き放すのは流石に可哀相だと思ったのか、涼は仕方なく肩の上に乗せてやった。
「あ、ありがとうございますーー……」
ルナフィスは眠るようにぐったりした。
「あ、そうだ。逆に聞くが、お前の方はどうやって手にいれたんだ?」
涼ははっと思い出したように言う。
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