第二話「過去と死神」

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「私? 私もあなたとほとんど同じよ。ただその世界に行くまでの行き方が違うけどね」 優奈は、ぽんとカードケースを叩いて見せた。 「じゃあそれを話してくれよ」 涼は窓の桟に腰掛けて腕を組み、聞く態勢になった。 「うん、いいわよ。えーっと……私の場合は中学生の時だったかな……」 キーンコーンカーンコーン…… 「じゃあね、優奈。また明日ねー!!」 学校が終わり、溜め息や会話が交錯する喧騒が広がる教室の中に、底抜けに明るい声が響いた。 彼女の名前は朝霧美佐子(あさぎり みさこ)、優奈の一番の親友である。 美佐子は元気に手を振り、優奈よりも一足先に帰宅しようとしている。 「あ、美佐子!! 明日九時に駅前だよ!!」 優奈はまとめていた教科書を机におくと、大声で美佐子に呼び掛けた。 「わかってるよ、大丈夫大丈夫!! じゃ、明日九時にねー!!」 「うん、じゃあね!!」 美佐子はにこっと微笑むと、教室をスキップしながら出ていった。 優奈は再び教科書などの鞄の整理に取り掛かった。 「ん?」 優奈が鞄に手を入れて整理しているときだった。 本と本の間に一通の二つ折りにされた手紙が挾間っていたのだ。 しかし、優奈は手紙の差出人を見る前にため息をついた。 ーーまた…… 手紙を鞄から取り出してポケットにいれると、人知れずそれをごみ箱に捨ててしまった。 実は優奈はこの手紙にひどく悩まされていた。 これで三十ニ通目…… 中身はラブレター。 一見すれば優奈は男子生徒からモテているという風にとらえることができる しかし実際、そのラブレターは全部同じ人からなのだ。 優奈が告白を拒否し続けているのはルックス、性格が悪いといった理由からではない。 むしろその全く逆である。 彼の名は新田聡耶(にった そうや)。 ルックスは完璧、性格もよく、さらには社長の息子と何から何まで兼ね備えている人物である。
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