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何を悩む必要があるのか。
大いに悩む必要がある。
なぜなら、彼に対して欠点があるのではなく、周りの交友関係に問題を抱えていたのだ。
新田がラブレターを優奈に送り始めてから、それに嫉妬する女子生徒が増え始め、だんだんと友達が減ってきているのだ。
正直なところ、優奈からしてみれば新田の存在はうっとうしい以外のなにものでもなかった。
「全く……いい加減にしてよね」
優奈はぼそっと呟くと、教室を出て独り帰路についた。
「あーー……いい加減諦めてくれないかなぁ……。これ以上長引くと流石に限界だよ……」
優奈はストレスを発散させるようにぶつぶつと愚痴をこぼしていた。
やがて自分の家の、門の前に差し掛かった。
「そういう事がわからないから……ん? 何だろう、あれ……」
門を開けていた手を止めて、気になったゴミ捨て場の方に目を凝らした。
ゴミ袋の間から何かが光っている。
優奈は少し気になってゴミ捨て場に歩み寄っていく。
そこにあったのは赤いカードケースだった。
なるほど、夕日に反射して優奈の目に飛び込んできたのだろう。
この赤くコーティングされたカードケース……
何故か手に纏わり付く。
赤い雨に降られた感じでカードケースからはポタポタと赤い雫が際限なく滴り落ちている。
それはまるで、涙のようだった。
優奈は中身を確認しようと何も知らずに蓋を開けた。
「きゃあっ!?」
その瞬間、優奈の体はカードケースの中にブラックホールの如く吸い込まれていった。
歪んだ空間に人一人が入れるほどの穴が開く。
その中から優奈は吐き出されるように空間に投げ出された。
「きゃっ!! 痛っ……」
優奈は腰を労りながら穴の方をキッと睨む。
しかし、それはもう跡形もなく消えてしまっていた。
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