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優奈は肩を震わせた。
教室を出るときの彼女の表情は何の悩みもないような綺麗な笑みだった。
彼女もまた、優奈の親友ということでいじめをうけていたのだ。
美佐子が最後に見せたあの満面の笑顔は、楽しさを装い、これ以上優奈に心配事を増やさせたくないという彼女なりの最高の振る舞いだったのだ。
まるで陽が沈んでしまったような…
向日葵が枯れたような…
そんな気分に襲われた。
それを考えた優奈は瞳から大粒の涙を零した。
涙は優奈の足元に何滴も何滴も零れ落ちていく。
ー私の悩みのせいで…新田のせいで美佐子が犠牲に!!
優奈は覚醒すると、宙に浮くカマをつかみ取り、まるで目の前に新田がいるように絶叫しながら激しくカマを振り切ってしまった。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
優奈はゴクリと唾を飲み込んで自分のしたことに気がついた。
「カマ…振っちゃった…。」
手からカマが力無く落ちた。
金属音が空間中にこだました。
「君はどうやら魔法を体得するに相応しい人間のようだな。常人が魔法を得ることはまず有り得ないのだがな…。憎悪が勝ったということか。」
「そ、そうなの…?」
「普通の人間なら死んでいる。……特別に願いを一つ叶えてやろう。」
なぜ死神が願い事を叶えてくれるのだ。
しかし、今の優奈にしてみれば死神が願いを叶えるという矛盾など、どうでもよかった。
「美佐子にあいたい…。美佐子を生き返らせて。」
「それはできん。禁忌に触れることになる。…とりあえず美佐子の姿を見せてやろう。」
死神はそういうと両手を前に突き出した。
すると、突然死神の手が光り、その手の先に美佐子の永眠している姿が現れた。
彼女の体は光に包まれ、存在を際立たせている。
「美佐子!!」
優奈は涙を流しながら美佐子のもとに駆け寄った。
優奈は“ごめんね”や“何で死んじゃうのよ”と美佐子の頭を撫でながら口々に言った。
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