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「お前の場合はルナフィスとは違う“カード魔術”を伝授する。うまく使えることができればお前はルナフィスよりも強くなるだろう。圧倒的にな。」
「そう…カードを使う魔法か…。」
優奈はそう囁くようにいうと、ちらっとルナフィスに目をやった。
すると偶然目があってしまった。
二人共なぜか目をそらした。
どこか複雑な心境なのだろう。
「こ、これからよろしくね、ル…ナ…。」
優奈が目を泳がせながらぎこちなく言っていると、
「ルナフィスだよ。」
と微笑んで言った。
確か優奈が初めて美佐子と話したときもこうだった。
会話に少し緊張気味だった優奈の心を優しく包み込んでくれたのは美佐子の他人を思う優しい心がそのまま映し出されたような笑みだった。
それを思い出した優奈は目から再び涙をこぼし、ルナフィスの小さなからだをぎゅっと抱きしめた。
「泣かないの、泣かないの。泣いちゃったらせっかくの可愛い顔が台なしだよ?」
ルナフィスは優奈の頭を小さい手で撫でながら、なだめるようにいった。
「さて、今からお前達には元の世界に帰ってもらう。だが、その際に優奈に言っておかなければならない事がある。」
「いわないといけないこと?」
「そうだ。本当の世界に帰った時、決してカードを生成してはいけない。例えば燃えてしまい、灰になったカードを復元するようなことだ。それともう一つ、死んだ人間を生き返らせてはいけない。この二つの事が守れなければ禁忌に触れることになり、最悪の事態がお前を待っている。」
「うん…わかった。」
優奈は顔をあげずにルナフィスを抱きしめたままコクりと頷いた。
「ではまたいずれ会うだろう。」
死神は涼の時と同じ様にルナフィスと優奈をカマできりつけた。
二人の記憶はここで途絶えた。
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