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優奈はそう言うとクスクスと思い出し笑いをした。
「でも普通の人には精霊は見えないんじゃ…」
「新田君の場合はカードに触れたからカマルの姿が見えたんだけど、委員長の場合は見えないよね?だから空中で新田君の内臓とかが飛び散って見えたと思うよ。だから私たちが見ていた映像よりももっとグロテスクだったんじゃないかな。」
「平然とそういうことが言えるお前はすごいな。」
涼は思わず苦笑した。
「でも…魔法って恐いよね。」
「?」
先程までとは打って変わって急にしおらしくなった優奈を不思議に思った涼は、優奈の話す声が若干小さくなったこともあって、少し距離を縮めた。
「魔法ってさ…便利だけど人の居場所なくしたり、大切なものを代償にしないといけないのかもしれない…。皆“魔法が使えるようになりたい”とか簡単に言っているけど、皆は知らないんだろうね、魔法の本当の恐さっていうことを…。」
話し終えた優奈に対し、涼はフゥーとため息をついてみせた。
「馬鹿かお前は。奴らが思い描いている魔法は夢の形なんだよ。誰がそんな悲しいこと考えてその能力を欲しがるんだよ。」
「…そうだね。」
優奈は鼻をすすると小さく微笑んだ。
少しシリアス気味な空気の中で、どこまでもマイペースなルナフィスは優奈の耳元で何かを囁いた。
「あ、そうだった!ありがとう、ルナフィス!!」
優奈は喜色を浮かべたかと思うと、鞄を背負いながら涼に詰め寄った。
「お願いがあるの。」
「お願い?ってか近ぇよ。」
涼はぐいっと優奈を押し戻す。
「私この学校でやりたいことがあるんだ。で、それを手伝ってほしいの。」
優奈は目を細めて言った。
「ま、まぁ別にすることもないし。何するんだよ。」
「それはまた説明するね。とりあえず明日七時に学校来てよ。」
「七時!?早っ!!」
「七時じゃないとダメなの。じゃ、また明日ね。」
優奈は軽くウインクしてルナフィスの腕をぐいっと掴むと、駆け足で教室を出ていった。
「…なんなんだよ、一体…。」
独り残された教室にため息が漏れた。
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