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「んっ…はぁ~…何するってんだよこんな朝っぱらから。」
六時五十九分…
涼は教室の自分の席に着席し、背中をのばしながら独り愚痴をこぼしていた。
それもそのはず、あと一分後には約束の時刻、七時になるというのに優奈が一向に姿を見せないのだ。
朝の静まり返っている教室に、秒針の時を刻む音が小さく響いている。
カチッ
秒針はついに一周し、時刻は七時を示した。
ーひっかけかよ…
涼はふぅっと大きくため息をついた。
実は涼は待たされるということが何よりも嫌いなのだ。
一分、いや一秒でも遅れると、遅刻とみなして帰宅してしまうほどなのだ。
ーやっぱり人なんか信じるもんじゃねぇな。
そう思って鞄に手をかけたときだった。
「ごめんごめん!!」
どこからともなく声が聞こえてきた。
だが不思議なことに姿はない。
声の主は間違いなく優奈だ。
「どこにいるんだ?」
涼が辺りを見回している時だった。
「よいしょ!!」
「うわっ!!」
突然何も無い空中から優奈とルナフィスが飛び出してきたのだ。
「どっから出てきてるんだお前は!!」
頭の情報処理が全く追い付かない。
「え?何が?」
優奈は何もなかったかのようにケロッとした表情で言った。
「いきなり飛び出してきておいて何とはないだろ!!」
「ああ、『スルーラン』の事ね。」
優奈はポンと手を叩く。
「スルーラン?」
「場所と場所を一瞬で行き来する魔法よ。ただこれ使うと魔力の消費が激しいのよね、ルナフィス?」
「全くだよ。もっと早く起きないから私が魔力使わないといけないんでしょ。」
ルナフィスはつんとした口調で言った。
「ごめん、ごめんルナフィス。杏仁豆腐あげるから。」
優奈は申し訳なさそうに頭を下げて言う。
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