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「もう、遅いじゃないの。」
体育館の入口付近に現れた涼に対して体育館のの壇上から半ば呆れた声で言った。
「仕方ねぇだろ、お前のスルーランは魔力使うかわりに早いんだからよ。」
涼はぶつぶつと文句を言いながら壇上に歩いていく。
体育館の中は埃っぽいニオイが漂っている。
「そんなことはどうでもいいの。とにかく早くこっちに来てよ。」
優奈は壇上の上にあるピアノにポンと手を置いた。
「んで、何を直したいんだ?」
「まずはこれよ。」
優奈はピアノをポンポンと叩いた。
「ピアノ?」
「そ。昨日小耳に挟んだんだけど、ここのピアノ最近音の調子が悪いらしいの。」
「なるほどな。じゃあすぐに終わらせてやるよ。」
涼がそう言ってピアノに右手をかざすと、
「あーーーっ!!待って待って!!」
と、優奈が差し止めた。
「どうしたんだ?」
「私がやりたいの。いいでしょ?」
「別に構わないが…。」
涼はぎこちなく頷くと、かざしていた右手をピアノから離した。
「ありがとうね。よーし、じゃあ早速直しますか!!」
優奈は服の袖をまくりあげると、ポケットからカードを取り出し、慣れた手つきで一枚抜き取った。
「へぇ~~もう見ないで抜き取ることが出来るんだな。」
「まぁね、嫌でも慣れるよ。時々間違えるけどね。」
優奈はそのカードをピアノの上に置くと涼と同じように右手をかざす。
「なぁ……こんな時になんだけどな、死神は…何で俺達に魔法を授けたんだろうな。」
涼はふと思ったことを口にした。
「…何でだろね…。でも、やっぱりこんな能力を授けるっていうことは何か目的があるんだろうし。」
「…そうだな。」
少しの間沈黙が続いた。
辺りにはピアノを修理しついる妙に明るい光だけが静かに光っている。
「…なぁ、虹…」
「あっ!!」
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