262人が本棚に入れています
本棚に追加
/102ページ
「だーれだ」
目の前が突然暗くなった。
感触とこの温もりで判断すれば、おそらくこれは人の手だろう。
しかし、突然の出来事にもかかわらず、涼は驚くどころか呆れた溜め息をついた。
「またお前か」
「おっはよー涼。今日も元気いいねー」
「お前は俺のどこを見てそう見えるんだ?」
「ノリだよ、ノリ」
少年は涼を小ばかにしたように、にこっと笑って言った。
「それなら俺はいつも元気だっていう事になるな」
「うん、そうだね」
「……」
皮肉を素で返されてしまった……。
涼は言葉が見つからず、うなりながら頭を抱えた。
涼に声をかけてきた少年の名前は藤峰和人(ふじみねかずと)。
何故か涼に親しく接する変わった子である。
別に彼は涼と同じように周りから嫌われている訳ではない。
というよりもむしろその逆で、女の子のようなかわいらしい顔立ちと、話題の豊富さで誰よりも愛されている存在だ。
そんな和人が何故涼と親しくするのかは全くもって分からない。
最初のコメントを投稿しよう!