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涼は優奈の腕を引っ張って体育館の出口へと促す。
やがてドアの鍵を素早く外し、勢いよくドアを開けると、校舎へと続く通路をひたすらに走った。
事はこれで終わったかに見えた。
「…?…あれは…相馬と…転校生?」
吹奏楽部の部長である二階堂が体育館へと楽器の点検をしに行く時、彼は二人が走っていく姿を目撃してしまったのだ。
「体育館からでてきたのか…?」
二階堂は眉をしかめて少し足早に体育館へと向かった。
そして、開けてはならない扉を開けてしまう…。
「よし、じゃあ今から別々に教室に入るぞ。お前と俺とが友達とかいう風に思われたらお前の居場所が無くなっちまうからな。」
涼は教室前の廊下でそう優奈に告げると、独り教室に入っていった。
二人は適当にアリバイ作りのために時間を潰していた。
その計算が裏目にでるとは知らずに…。
涼は教室に入ると、少し足早に自分の席にむかった。
椅子を引き、着席してから辺りを少し見回してみた。
いつも以上に視線が冷たい。
「ね、ねぇ涼…さっき体育館に行ってた?」
和人はなぜか恐る恐る問い掛ける。
「行くわけねぇだろ、あんな所。俺は今日は校舎から出てねぇよ。」
涼は呆れたような演技を見せる。
二階堂に見つかっていなければ俳優も真っ青の演技だったであろう。
「相馬、それ嘘だろ。」
突然二階堂が涼の机に手をバンッと大きな音をたててついた。
物凄い剣幕だ。
教室には昼休みだというのに会話の一つも飛び交わない。
「どこにそんな証拠があるってんだよ。」
涼もキッと二階堂を睨み返す。
流石の二階堂も一瞬怯んだようにも見えた。
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