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ある日を境に二人に対するいじめは幕を開けた。
朝学校に来ると、“涼と優奈はできている”と大きく書かれ、机の中に置いてあった教科書はズタズタにされ、机には油性ペンで悪口をかかれ、訳のわからない合成写真をばらまかれ、家の中の盗撮映像を昼休みに各教室に設置されているテレビに流したりと法に触れるような事も何食わぬ顔で行っていた。
彼らは必死に耐えた。
この世の終わりがきたような気分だろう。
堪えて数日がたったある日…
来てはいけない日が来てしまう。
それは放課後に涼と優奈が帰路について校門を出ようとしているときだった。
「はぁ…これで何日目だろう…。」
優奈は暗い声で重たいため息をついた。
「一ヶ月ぐらいじゃないのか?それにしても吉岡のやつ、止めるどころかさらにエスカレートしてきてるな。」
涼はまるで他人事のようにいう。
「“せんせー!”って叫びたいけど証拠がないからね…。」
「…まぁな。そのどうしようもないやり切れなさを背負って死んだ奴が五人もいるんだ。ま、俺達の場合はまだ魔法があるから大丈夫だけどな。」
「ほんと。私もルナフィスがいなかったらたぶん自殺してると思うよ。ありがとう、ルナフィス。」
優奈は横を心配そうに飛んでいるルナフィスににこっと微笑みかけた。
「そんな…私別に何もしてないよ。それにパートナーなんだから困ったときはお互い様だよ。」
ルナフィスは少し照れ臭そうに言ってハハハと小さく笑った。
「だね。ルナフィスの他にもカードの精霊達もいろいろと助けてくれてーーーーって、あれ?」
ポケットを触った優奈の顔から血の気がサーッとひいていく。
「…?どうした?」
涼は不思議に思って首を傾げて尋ねた。
「カード学校に忘れて来たみたいなの…。」
「忘れた!?おいおい…今忘れたらエライ事になるぞ…。」
涼が半ば呆れたような口調で言うと、優奈は踵を返して直ぐさま教室に引き返した。
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