262人が本棚に入れています
本棚に追加
/102ページ
「虹河のやつ、遅いな。」
涼は壁にもたれかかって腕を組むと、ふぅ~っとため息をついた。
「そ、そうですね。」
ルナフィスはぎこちなく頷きながら答えた。
なぜかルナフィスは涼から体を背けてもじもじしている。
涼はその事に全く気付いていない。
ー神様!!
ルナフィスは心の中でそう叫ぶと、人という字を三回手に書いて、ゴクリと飲み込み、ばっと涼の方を向いた。
「あ、あの相馬さん、ちょっとお話が…。」
「ちょっとあいつ遅すぎるな。ルナフィス、見に行くぞ。」
涼は目の前にワープホールを築く。
ルナフィスははぁ~っとため息をつくと、涼と共にワープホールの中に入っていった。
二人が出た場所は涼の教室に一番近い場所にある男子トイレだった。
「だ、男子トイレに出てくるなんて聞いてないよ!!」
ルナフィスは顔を真っ赤にして両手でバッと顔を覆う。
「向こうからは見えてないんだから入っても入らなくても一緒だろうが。」
涼は冷たくそう突き放すように言うと、一人でさっさと教室に駆けていった。
やがて優奈の座り込んでいる姿を見つけた。
「お前俺達待たせといて…って…この灰は何なんだ?」
涼は灰と優奈を交互に見ながら問いかける。
「わ、私のカード…吉岡さんに燃やされちゃったの…。」
優奈は泣きながら言った。
よく見れば、優奈の足元は涙で濡れている。
「はぁ~…やっぱりか…。」
涼は頭をボリボリとかいて、やり切れなさを机にぶつけた。
「優奈…。」
ルナフィスは優奈を慰めようと肩に乗って頭を撫でる。
「…………さない……。」
「え?」
優奈がぼそっと呟くように何かをいうと、ルナフィスは眉をしかめて優奈の顔を覗き込む。
「絶対に許さないんだから…。」
優奈はぎゅっと拳を握ると、肩を怒りに小さく震わせながらその場にゆっくりと立ち上がる。
最初のコメントを投稿しよう!