第三話「いじめと禁忌」

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「相馬さん!!」 「そ、相馬君!!」 優奈とルナフィスは涼の元に心配そうに駆け寄る。 「痛…お前らは下がってろ。」 涼は体に鞭を打つように沈痛な表情を浮かべながら立ち上がる。 「相馬さん、私も参戦する!!魔力はそこそこあるから足手まといにはならないはずだよ!!」 涼はア然とした。 というよりも少し嬉しかった。 今まで自分の後ろには誰もいなかったのだから。 「…わかった…。『砂塵』だ、ルナフィス。」 「はい!!」 ルナフィスは即座に死神の前に砂埃を巻き上げた竜巻を作りだした。 「こ、ここからどいしたらいいの!?相手の視界を遮るだけの魔法だよ!?」 「任せろ、『ダイアモンドダスト』!!」 小さな氷の結晶が空気中に霧散したかと思うと、砂塵の向こうの死神を取り囲んでいた。 「こ、これは…体が動かん…。」 「へんっ」 涼の思惑通り、死神の周りには氷の結界が張られた。 「砂塵を止めろ!!」 「は、はい!!」 風が少しずつおさまりはじめた。 「ぐ…か、体が…」 死神は結界に縛られ、身動きがとれずにいる。 ダイアモンドダストの結界は長持ちはしない。 倒すなら今しかない。 涼は死神に詰め寄る。 「『サラマンドブラスト』ーー!!」 涼の声と共に彼の右手から強烈な炎が無尽蔵に繰り出された。 涼の体は反動で後方に飛ばされたが、持ち前の運動神経で地面にスタッと立った。 右手にはまだ炎の余韻が少し残っており、わずかながら火がちらついている。 「…勝った…のか…?」 涼は死神のいた場所へと慎重に足を運ぶ。 死神の姿は跡形もなく消えていた。 「か…勝てた…。勝ったぞルナーーーーっ!?」 「きゃああああああああーーーっ!!」 胸の辺りにひどく鈍痛を感じた。 ルナフィスが絶叫し、優奈も目を白黒させている。
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