第四話「絶望と希望」

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「…い…ぶか…おい…。」 ー誰かの声が聞こえる。 「おい、相馬、虹河、大丈夫か?」 涼はゆっくりと目を開ける。 自分の教室にいた。 あの世界からいつの間にか帰って来ていた。 仰向けの体を起こしてみる。 「目が覚めたか、相馬。」 「せ、先公か…」 涼は寝ぼけたような声でそう言うと、ゆっくりと辺りを見回した。 紛れも無く自分の教室だ。 あの世界から帰ってくると現実さえ疑わしくなる。 「あっ…」 涼ははっと思い出して胸元を手でなぞってみた。 ーあの時確かに貫いていた… しかし、そこには傷一つなかった。 「う…うーん…。」 涼の背後で優奈の声が聞こえてきた。 どうやら目が覚めたらしい。 「二人共、何やってたんだ、こんなところで。」 担任の仲井は呆れたような表情を浮かべて言った。 「それに何だ、この灰は。お前ら、薬でもやってたんじゃないだろうな。」 仲井は二人を眼鏡越しにキッと睨むように見る。 「ち、違うんです、先生!!これは…。」 「燃やされたんだよ、吉岡に。こいつの大事なものをな。」 涼は少し喧嘩腰な口調でつっかかっていく。 「燃やされた?」 「ああ。」 「証拠もないのに勝手に吉岡を犯人にするなんて非常識も甚だしいぞ。」 「なっ…!?」 「そんなくだらないことばかり言ってないで早く帰れ!!いいな!!」 仲井はそう言い残すと、教室を面倒臭そうにしながらでていった。 「くそっ…仲井の野郎…。」 涼は立ち上がって服についた埃をはらうと、仲井の背中をキッと睨んだ。 「ね、ねぇ相馬君…。」 「なんだよ、自分で立てよ。」 頭に血が上っている涼は優奈を突き放して八つ当たりする。 「それぐらい分かってるわよ。そうじゃなくて、私達なんでここにいるの?」 「そう言われれば確かにそうだ。俺もさっき胸元に空けられた傷を確かめたが、傷一つなかったからな。」
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