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二人にとって辛い毎日が幕を開けた。
相変わらずいじめの手は緩まず、どちらかといえばカードを燃やされた時以来ひどくなっている。
魔法が使えないとなると、いじめの苦悩から逃れる事は困難になり、次第に堪え難いものになってきている。
彼等を止めることは不可能だった。
「はぁ~…もう限界…。」
優奈は自分の部屋の隅に座り込み、溜め息をついた。
学校が終わり、家に帰宅した優奈は悪戯の日々にショックを受けているようだ。
精神面はボロボロだった。
「どうしよう…ルナフィス…。私どうしたらいいのかな…。」
優奈は俯き、ふさぎ込む。
「落ち込んでたら駄目だよ。相馬さんはこんな時でも絶対に何か考えてるはずだよ?」
「…あんたやけに相馬君に絡むわね。」
優奈はルナフィスを半眼で見据えて言う。
「え?そ、それは…その…。」
ルナフィスが頬を赤らめて言い淀んでいる時だった。
ピンポーン
家のインターホンが一回鳴った。
「…?誰だろう…宅急便かな…?」
優奈はインターホンに応じてみる。
「はい。」
「相馬ですけど、虹河さんいますか?」
ー相馬君?
「あ、私だけど…」
「虹河か?ちょっと話があるんだ。」
インターホン越しにいつもとは違う少し明るい声が聞こえる。
「本当に?あ、上がってきてよ。」
優奈はインターホンを切ると、駆け足で玄関に向かった。
その足音はどこか明るい。
「どうしたの優奈?」
「相馬君がきたのよ。何か話があるんだって。」
優奈はそう言いながらドアの鍵を開ける。
「お邪魔します。」
「部屋はこっちよ。」
涼はシンプルな白で統一された廊下を歩いていく。
引っ越しをした後の部屋に近いぐらい何もない。
優奈が部屋のドアを開けると、そこには本当に女の子の部屋かと思う程に飾ることをしていない空間が広がっていた。
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