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「う、嘘…じ、じゃあもしかしてフィールドに出てきたのは私を褒めにきてくれたんじゃなくて…。」
「そうよ、対戦相手として出てきたの。」
ソラフィスは優しい作り笑いをして言った。
「ではお二人、始めてください。」
ソラフィスの表情がかわった。
まるで一番嫌っている人を見るような目だ。
ソラフィスの威圧感は尋常なものではない。
それは今まで姉を見てきたルナフィスが一番わかっていた。
ーやるしかない!!
ルナフィスは咄嗟に身構えた。
「行くわよ。」
ソラフィスがそう言った途端、二人の距離が一気に縮まった。
ーは、速い!!
思考回路はソラフィスをとらえることができない。
戸惑っているうちにソラフィスはルナフィスの腹部に手を押しあてる。
「ごめんね、ルナフィス。」
ソラフィスの冷酷な笑みを見たルナフィスは、はっと我にかえり、腹部にあてられた手をばっと払いのけて一度距離をとった。
「はぁ…はぁ…危なかった…。」
ルナフィスは額の冷や汗をぐっと拭った。
「どうしたの、ルナフィス?一方的にやられてそれでおしまいなの?」
ソラフィスは馬鹿にしたような口調でそう言ってクスッと笑った。
「…わかったよ、ソラ姉。私本気でいくからね。」
ルナフィスは右手に魔力の光を集め始めた。
徐々に光が大きくなり始め、やがてその光が白く輝いた時、
「『ウィンターヘル』!!」
と、強力な呪文を唱えた。
この呪文は雹などで物理的ダメージではなく、凍らせて絶対零度の中で殺してしまうというものである。
だが、強力ゆえに魔力を底をついてしまうほどに消費してしまうのだ。
始めから順当な勝負で勝ちなど狙っていない。
この一発に賭けるしかなかった。
「ごめん、ソラ姉!!」
ピキィィィィィン!!
氷が完全にソラフィスを覆った。
氷の中にはソラフィスが確かに凍ってしまっている。
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