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「謝る必要なんてないわよ、ルナフィス。」
背筋が凍り付いた。
そっと振り返った先には
いないはずのソラフィスが笑みを浮かべていた。
「ど、どうして…。」
ルナフィスの頭の中は真っ白になった。
それもそのはず
ルナフィスには魔力がほとんど残っていないのだから。
「あれは私の分身よ。ルナフィスは知ってたはずよ?私が心理と行動を先読みすることが出来ることを。あなたの事を読むぐらい、簡単な事よ。」
ボウッ
ルナフィスの羽が発火した。
火の向こうにはソラフィスが当たり前のように冷酷な笑みを浮かべていた。
ルナフィスは叫ぶこともなく、人形のように地面に落ちた。
「私に勝つなんて…無理なのよ。」
「まだ覚えてる…。ソラ姉が見下すような目で私を見ていたことを。」
ルナフィスは唇をぐっと噛み締めた。
「そっか…あのお姉さん、そんなに強いんだ…。」
「ねえ、優奈。」
ルナフィスが間髪入れずに言う。
「どうしたの?」
「“JOKER”のこと、相馬さんに相談してみない?」
「え?でも…さっき…。」
「大丈夫だよ。相馬さんならきっと分かってくれるから、ね?」
ルナフィスは優奈の顔の前で明るく言った。
二人の目があったとき、ルナフィスがコクリと頷いた。
暗黙の了解だ。
「分かった、じゃあ私…相馬君に謝ってくるね。」
優奈は玄関でいつもの靴を素早くはくと、その勢いのままドアを開けた。
すると…
「そ、相馬君…。」
そこには帰ったはずの涼がいたのだ。
「う、いや…その、何と言うか…謝りたくて…さ。…ごめん。」
涼は優奈から目をそらして少し気恥ずかしそうに言った。
「…ううん、私の方こそすぐかっとなっちゃって…。ごめんね。」
二人は気まずそうに目を泳がせる。
そして、たまたま目があったとき、思わず二人とも吹き出してしまった。
「あ、そうだ。大事な話があるの。」
「大事な?何だよ。」
「とりあえず中で話しまそうよ。」
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