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そしてついにカマルの心の内を見抜いた。
「“カレイド”」
ソラフィスがそう唱えたときだった。
誰もが目を疑う事が起きたのだ。
ルナフィスが二人いる…。
いや、ソラフィスが変身したのだ。
何から何までルナフィスに。
カマルも思わず手を止めてしまった。
「あなたルナフィスに気があるんでしょ?虹河さんはギャグがお好きみたいだから今この場でルナフィスの事をどう思っていたか洗いざらい話してあげましょうか?」
ソラフィスは嫌味たらしくそう言うと皮肉な笑みを浮かべた。
「ぐぐ…貴様…。」
カマルはぎゅっと拳を握りしめたまま動けずにいた。
怒りと迷いにその手が震える。
「カマル!!相手はソラフィスよ!!本物のルナフィスはここにいるから!!」
ーそうだ…相手はルナフィスじゃなくソラフィスだ!!
カマルは余計な考えを振り払うように首をブンブンと横に振ると、ソラフィスに再び攻撃を仕掛けるべく一気に詰め寄った。
「あら、じゃあこうすればいいかしら?」
ソラフィスは不気味に微笑んだかと思うと、再び自分にカレイドをかける。
またカマルの手が止まった。
無理もないだろう。
目の前には傷を負い、ボロボロのルナフィスがいるのだから。
「ゴホッ…ゴホッ…カマル……助けて…。」
「ルナフィス!!」
「あ、ば、馬鹿!!」
カマルの耳に優奈の声は全く届いていなかった。
最愛の人が助けを求めている…
助けない者はいない。
たとえそれが真実の姿でなくとも。
「大丈夫かルナフィス!!」
「フフフ…精霊って結構馬鹿なのね。」
ソラフィスはクスクスと嘲笑うと、カマルの心臓を変形させた鋭利な鋼鉄の指で一突きにした。
その指は異常なまでに長く伸び、簡単に体を貫いた。
その瞬間、ソラフィスの姿は元通りになる。
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