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「・・・・良かったのか?」
夜空にうごめく二つの翼。そのうちの片方から発せられた言葉。
至極短い言葉ではあったが、少女にはそれで十分すぎるほどに伝わった。
「まあねえ。ま、頑張ったけど抵抗が激しくて倒せませんでしたとでも言っとくか~」
「ごまかせると思うか?」
「ごまかせないだろうけど洒落は解するよあの人は」
「・・・・気楽だな」
小柄な少女のあっけらんかんとした口調にも、長身の少年は表情を動かさない。
ただ、その広い肩がわずかに上下したのみ。
「それにしても、何故殺さなかった」
「さあて、話すと長くなるからねえ。
まあ強いて言うなら・・・・仲間意識と好奇心かなあ?」
月明かりで影になった少女の表情を伺い知ることはできなくて。
その声色は怒りとも喜悦とも悲しみともとれて。
「私が昔できなかったことを、私にそっくりなあの娘ができるかどうか、ちょっと見届けてみたくなったのさ」
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