第九章:東西奮戦記

25/55
前へ
/559ページ
次へ
「職場仲間が痣だらけで床に転がってるのを見るのって気持ちいいもんじゃないね、やっぱ」 廊下を疾走しつつ壁際に倒れる警備服の群れを見ながら舌をつきだす。 「まあでも」 T字の突き当たり。迷わず右へ。 「道しるべになってるあたり、みんなにゃ悪いが便利この上ないがね」 十五メートルばかり先を走り、今まさに階段を降りようとしている白い背中を見て笑み。 「テディ、【電撃波】!」 走る閃光。が、侵入者に当たる直前で上に屈曲する。 命中したのは階段。 「必中技ってのは目標“物”をほぼ確実に狙い射てる技なわけだがな、それが生物ばっかってわけでもないんだわ」 やや得意気に言いながら行く手を遮られて動きを止めた白忍者に歩み寄る。 それでも油断はしてない証拠に、スターミーとエレキブルはそれぞれ【水の波動】と【電磁砲】を構えている。 「一歩でも動いたら容赦なく射つぞ。命が惜しければカブトプスとストライクを」 寒気、足を止める。 違和感、何処から?    うえ 答え、頭上から。 見上げている暇などない。反射的に後ろへ。先ほどまで立っていた場所に突き立つ鋭い爪。 「……サンドパンとはまためんどくさいのチョイスしたね」 苦笑いさえする暇なく、サンドパンが【丸くなる】。 そこから可能な攻撃手段は、一つ。 「───【転がる】」 一度バウンドし、跳躍。狙いは顔。 大きさはサッカーボールくらいだが、鉄の板をも貫通するトゲを全身から生やしているボールなど蹴りたくもないし受けたくもない。 ましてや顔面に食らうなど想像さえ御免被る。 「T.B!」 【水の波動】。本来なら弱点技で簡単に戦闘不能にできるが、回転が水を弾いたのか。 後ろに飛ばされたサンドパンは、【丸くなる】を解いて戦闘態勢をとりながらもその動きにダメージは感じられない。 そして、サンドパンばかりに気をとられるわけにいかないのも現実だ。 「【雷パンチ】!【高速スピン】!」 壁を蹴って突貫してきたカブトプスとストライクを弾き飛ばす。 「逃避行はやめかよ忍者君」 こちらに向き直る侵入者に対しからかうような口調のヒカル。 答えは、新たに追加されたアーマルド。 「……これはもうダメかもわからんね」
/559ページ

最初のコメントを投稿しよう!

234人が本棚に入れています
本棚に追加