第九章:東西奮戦記

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「どうしたよお巡りさん!」 不規則かつ連携のとれた動きで襲いかかってくるアーマルドとサンドパンの猛攻を受け流しながらヒカルが怒鳴る。 「手持ちの相棒が一斉にストライキでも起こしたか!?」 「そんなわけないでしょ!」 「そいつぁ残念!じゃあ敵さんの動きがどうおかしいって?!」 察しがいいのがあの男の最大の長所だ、とは、ヒカルと組むにあたってナツメから最初に教わったことだ。 元ロケット団幹部という噂もあるのでできれば距離をとりたい人物だが、少なくともこの点に関しては正確だったと認めざるをえない。 さらに言えば彼女の人を見る目も。 「さっちゃんとリーフによると、奴等の動きがバトルじゃなくて何か芸でもしてるみたいだって」 「芸ねぇ…………」 思わず首をかしげる。確かにストライクやカブトプスは特に動きが速いだけではなく派手で、カブトプスなど時折まるで踊るような…………… ちょっと待てつい最近見たぞそんなカブトプス! 「なぁ、その芸って、具体的にどんな芸だかわかるか?」 「どうって………」 二匹に視線を移すエミリー。 () 瞬時に、かつ同時に返ってきた答え。そのままヒカルに伝える。 「大道芸ですって」 「…………うん、俺あのチビ忍者に物凄く心当たりあるわ」 「ウソでしょう!?」 「ここで嘘ついて何か得が?」 もっとも声を聞いた時点でその線も考えないでもなかったが、これで確定だ。一生涯分の収入丸ごとかけてもいい。 まあ正体がわかったところで「何故こんなことをそいつがしているのか」という新しい疑問を呼んだだけだが。 そこで、もう一つ気づく。 「心当たりといえばよ、こっちの忍者さんはどこいった?」 言われてエミリーもあたりを見回す。 「さぁ。別れる時は後ろに回り込むみたいなこと言ってたけど………」 「【翼で打つ】!」 下の階から床を突き抜けてクロバットと共に現れたアンズに対する第一声は、ヒカルの「弁償してもらうからな」だった。
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