第九章:東西奮戦記

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「来るぞ!」 言葉など必要ない。一瞬で十数メートルの間を積めた白い死神が、鎌の代わりに木製の棒を振りかざす。 「【スピードスター】!」 星形のエネルギー弾のゼロ距離射撃。流石に弾くだけの余裕はなく、横っ飛びで回避。 「まだまだぁ!」 シャワーズが【渦潮】で追撃。抜群のコンビネーションだがその動きを捉えるには速度があまりにも足りなすぎた。 「っの!シャーリー、」 痺れを切らしたエミリーが、一際声高にシャワーズに命じる。 「最大出力!【水の波動】!」 渾身の一撃とはまさにこれ。威力も速度も範囲も段違いの水の衝撃波が、白い死神に襲い掛かる。 威力的に受け止めることも、範囲的に左右に避けることも不可能なソレを前にして、白装束が立ちすくんだまま地面に棒を打ち付け─────そのまま上へ跳んだ。 「凄いなんて話じゃねえな…………」 シャッターを切ることさえ忘れて呆然と目を見開くギンペイ。 しかしその視線の先にあるのは、 「この作戦は思い付かなかったわ」 白装束ではなかった。 【水の波動】を回避し、着地したところで気配を感じ、振り向く。 飛んできた【スピードスター】は十発。全弾棒で弾き返したところで、背筋に冷水を浴びせかけられたような悪寒が走った。 「なぁあんた、」 その時、白い死神は 「“油断大敵”って知ってるか?」 この日はじめての、そして致命的な「遅れ」を取る。 「ほんじゃしばらくお休み」 懐を取ったヒカルの右拳は、いとも簡単に意識を刈り取った。
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