234人が本棚に入れています
本棚に追加
/559ページ
「来るぞ!」
言葉など必要ない。一瞬で十数メートルの間を積めた白い死神が、鎌の代わりに木製の棒を振りかざす。
「【スピードスター】!」
星形のエネルギー弾のゼロ距離射撃。流石に弾くだけの余裕はなく、横っ飛びで回避。
「まだまだぁ!」
シャワーズが【渦潮】で追撃。抜群のコンビネーションだがその動きを捉えるには速度があまりにも足りなすぎた。
「っの!シャーリー、」
痺れを切らしたエミリーが、一際声高にシャワーズに命じる。
「最大出力!【水の波動】!」
渾身の一撃とはまさにこれ。威力も速度も範囲も段違いの水の衝撃波が、白い死神に襲い掛かる。
威力的に受け止めることも、範囲的に左右に避けることも不可能なソレを前にして、白装束が立ちすくんだまま地面に棒を打ち付け─────そのまま上へ跳んだ。
「凄いなんて話じゃねえな…………」
シャッターを切ることさえ忘れて呆然と目を見開くギンペイ。
しかしその視線の先にあるのは、
「この作戦は思い付かなかったわ」
白装束ではなかった。
【水の波動】を回避し、着地したところで気配を感じ、振り向く。
飛んできた【スピードスター】は十発。全弾棒で弾き返したところで、背筋に冷水を浴びせかけられたような悪寒が走った。
「なぁあんた、」
その時、白い死神は
「“油断大敵”って知ってるか?」
この日はじめての、そして致命的な「遅れ」を取る。
「ほんじゃしばらくお休み」
懐を取ったヒカルの右拳は、いとも簡単に意識を刈り取った。
最初のコメントを投稿しよう!